翠嶺クラフティング

個人作家、上住断靱の活動記録

失われた物

 父が実家に残してきた物を勝手に捨てていた。後から聞いたところによれば、家を改装するために片付けをしたかったという。それならばその前に我ら兄弟を一度呼んで、いる物を引き上げさせて欲しかった。
 弟が大切にしていた100名当選のカードが捨てられたというところから始まった。弟は悲憤し、母に「一生恨みます」とまでメッセージを送ったようだ。慌てた母が私に助けを求めてきたのである。私も3つほど回収したい大切な物があったので、急遽、実家に戻った。
 机に飾ったり、引き出しに大切な物を入れていたりした。父はよりによって、そこから全てを捨てていったのだ。
 探索を開始すると、弟のカードは生存していた。これで弟の機嫌は直ったようである。ゴミ袋を開けて、私の物も探す。
 私が回収したかった三つは
「恩師から貰ったフクロウのぬいぐるみ(手のひらサイズで机に飾り苦楽を見守っていた。メッセージつき)」
「2002年恐竜博限定のチョコラザウルス アクロカントサウルス(骨)」
「同 アクロカントサウルス」

 下2つは千葉に引っ越していた元同級生に買って送って貰った物で出来が良くて気に入っている。こちらはすぐに見つかった。持って帰って、骨のほうは右腕が取れていることに気がついたが。
 フクロウはどうしても見つからなかった。
 ぬいぐるみは結構前にまとめて捨てたようで、机の上で見守ってくれていた彼はもういない。帰宅してから、「こっちに持ってきたかも」と思って荷物をあさった。分かっていた。持ってきていたら間違いなく机に置くこと。最後に実家に帰った時に「こっちでまた会おうな」と置いたままにしたこと。
 弾丸旅行だったから、帰宅して一息ついたところでとても悲しくなった。
 物に執着しても仕方なく、次に進もうと思うのだが、辛いものは辛いのである。