原爆の日
中学校三年生の時に広島の平和記念式典に参加したことがある。地元市内の中学校から二人ずつ参加して、一泊二日の行程であった。因みに、広島に行ったのはこの時が初めてだった。
行くことになってから初めて知ったのだが、父方の祖父は広島にいた。
原爆にあった時は爆心地とは山を挟んで反対側の工場で働いていたため、工場は全壊したものの、五体満足で生き延びた。
そこからの話は長くなるので、割愛するが、祖父は親族でも私にしか原爆の話をしなかった。それもたった一度だけのことである。小説を書くようになってから、一度だけ。色々と言いにくいこともあったようだ。人の生死に関わることも多かったのだろう。
「一つ書いてくれや」
そう言われてから、未だその小説は完成していない。早く書け、という話だが。
そんなわけで、8月6日になると祖父の夏に想いを馳せることになる。職場で暑中見舞いを発送し忘れたことを頭の隅に追いやりながら。