大坂文庫

個人作家、上住断靱の活動記録

ナワバリ

ブログ記事がほぼ告知しかない。
たまに掌編を上げたりもするが、それも不定期。更新されないブログは碑文であり、気紛れで訪れた人にしか読まれない。思った事はすぐ様Twitterで吐くのでブログネタも溜まらない。他で公のものを更新するせいか億劫になり全てが遅々としているのである。
言い訳はこれまでにして、要は書く事にもっと集中しようと思った次第で今日の更新となった。
久しぶりのネタは仕事中の逃走劇である。
何、犯罪ではない。厄介事からの逃走だ。

大阪は曇。
汗っかきの私は今日もヘルメットをびちゃびちゃにしながらスーパーカブで営業に回っていた。お客さんのとこへ行くには駐輪に気を遣う。一つ間違えば、物陰から駐禁おじさんが私のカブを舐め回し、不吉な呪符を貼り付けていってしまうからだ。
もう一つある。
用事がない場所の前、近隣に駐輪すると苦情がくる場合だ。これもうっかりとはいえ、起こしたくない事態だ。
私は慎重にお客さん家の隣にあるマンションの植林付近に停めた。ここは入り口でもなければマンション居住者用の駐輪所、その出入り口でもない。謂わば一般道である。
ところが、事件はそこで起こった。
お客さんと手続きを済ませ、機嫌良くカブに乗る準備をしていると、植林付近を掃除しているおばさんがいた。
私はその背中から、あるものを感じていた。
田舎出身だから分かる「ナワバリ意識の強いやつ」の気配である。
大体は女性で、自らのテリトリーでないところまで自己所有のように振る舞い、残虐非道を繰り返す。神様もきっと禁止している行為である。旅行先の金沢でこの手の土人会い、旅行気分を台無しにされたこともある。上住、精神の敵といっていい。

私は鍵を差し、ヘルメットを被った。グローブをはめる。
おばさんが立ち上がった。
(くるぞ)
「どこに用ですか?」
顔を向けたおばさんの目が予想以上に死んでいる。ホウキとチリトリで武装しているからかなり危険だ。ヘルメットの中が変な汗で湿り始めた。
「あっち」
私の指は高々と太陽を指した。
嘘ではない。私は常に高みを目指している。
「はぁ……」
虚を突かれるおばさん、その隙にエンジンをかけた。
愛車はいつもは焦れるのに、この時だけは素直に応じた。
振り返ってはいけない。例えナンバーを覚えられたとしても。右手に力を込めてフルスロットル。
私とカブは太陽に向かって全速力でその場を後にした。