大坂文庫

個人作家、上住断靱の活動記録

猫の鳴き声

奇妙なことが起きた。ふとした時に猫の鳴き声が聞こえるのだ。聞き間違えもある。マンションの各部屋で扉が開閉すると変な音がなるからだ。因みに今住んでいるマンションは魚ですら飼うこと禁止の厳しいマンションだ。寝ている時にも聞こえて何度か目を覚ましたこともある。
「あ、猫の鳴き声だ」「……と思ったら違った」で済めばいいのだが、今日ははっきりと聞こえた。
思わず身が固まった。
丁度、豚の角煮が出来上がって、火を落とした時に聞こえた。鍋からしたのかと思ったが違う。それは、はっきりと目の前で鳴いた。
周囲を見渡すもそんな影はなく。換気扇にも何もいない。焦った自分に「考えろ……考えろ」と命じる。
しかし、思いつくこともなく、どっか病気になったかなと気持ち悪いまま過ごしていた。
その理由がブログを書こうとした時に判明した。何を書こうかと思った時に、また猫の鳴き声が聞こえたのである。それも私の顔面から。そう、私が鼻からため息のようなものをふいた時に、鼻の内部の事情から、猫の鳴き声のような音が出たのだ。
豚の角煮を見るために、私は変な息の吸い込みかたをした。それが鼻から出た時に猫は生まれたのだ。怪異の正体は自分の鼻であった。つまり、起こされたのも自分の鼻のせいなのだ。
どうしてこうなったのか。
先週、顔面が血だらけになるほど派手に転んだ。その時、鼻になんらかの事情があって、猫が生まれたのだ。深く吸って、鼻から息を長く出さなければ鳴き声はしない。
それに、自分にしか聞こえないから、自分だけに分かる鳴き声である。これが一生なのか今だけなのか、鼻の猫のみが知っている。