翠嶺クラフティング

個人作家、上住断靱の活動記録

書き上がらない日々

ここのところ作品を書き上げられていない。
と、言う以上は久々に書き上げられたわけだが、私が思う書き上がらない理由は三つある。

一、プロットが甘い。甘くて筆が止まってしまう

二、いいものを求めすぎている。まず書き上げればいいのに、途中で見直しに入る

三、疲れすぎている

今年は「書く年」と決めて三ヶ月で掌編一つなのだから、イケていない。もっとも、これを試練と見るなら、これほど悩むことはいいことだろう。
いっそ書く事を止めてしまおうかとも思って筆を放ってみたが、ふいに出るのは感想をくれた人々の言葉だ。思い出してまた筆をとる。取り敢えずこれだけは仕上げようと思いながら。
途中、Kindleで買った本を読むだけに専念したりもした。
作品を作る事だけでなく電子書籍の問題も考えたり、でもまだ漸く体制が整ったばかりで売れていないから偉そうなこともいえんなとメモにとどめたりした。
そんなこんなで一つ出来た。
一つ出来たらなんだかほっとした。

セールス真理の扉

「お前何もやってへんやんけ」

血走った眼で新しい上司が放つ。
上に立つ者として絶対に言ってはいけないワードだ。私がこれを口にしたら大阪軍団の気の良い連中は槍を持って私を穴だらけのレンコンにするだろう。丁寧に縦穴で。
彼の世界ではセールスとはお願いしまくるものである。
厚かましくもお願い出来るというのは一つの才能だと思うが、世の中には別のセールス方法も存在することを彼は知るべきだ。彼のウドが如く細っこい体より世界は幅広い。
お願いセールスは、それが出来ないものからすれば「一発やらせてくれ」と懇願しているようなもので、口説き文句は多種多様。「一発」では、如何に勉強不足か自ずと分かるであろう。彼は扉の前に跡形もなくなる。
しかし、彼にはこれが全てだ。
ここにいる以上、上司である彼の発言はこの世の真理だ。クソ狭い世界の中で。
彼が私に言う「何もやってへん」は客に駄々をこねることだ。駄々をこねていない私は何をしようとも何もやっていない人間になる。

時には協力を仰ぐ必要もあるだろう。
だが駄々をこねるセールスマンは価値がない。
見返りを出せぬ者を誰も頼りにしない。
ねだるばかりで提供出来るものがなければ消えるのみである。転勤すればリセットされるが、それでは自身が育たない。

ぐだぐだ言ったが、最初の一言に対して「何もやってないわけないですよ」と返した。
彼の真理は諸人にとって害である。

私の京都文フリ前夜

第一回文学フリマ京都が22日(日)に開催となる。
あの時私と握手した人たちが出てくれているのだろうか、出ていたなら京都代表にも握手したりするのだろうか、五年経つという感慨深さも相まって振り返る次第である。
あれから私は成長したのだろうか。
SからMへと(服のサイズ)と太ったが、人間的にはどうであろうか。
酒には弱くなり、煙草も吸わなくなった。しかし以前より充実している日々を送っている。今年は激動の年になりそうだ。
思い出に重ねて京都では脳内で編みに編んだ言葉を口にするつもりであり、その場面として文フリ京都は私にとって重要である。果たして私はどんな顔で立っているのだろう。
煙草の代わりに鉛筆を噛み噛み、妄想する。

三十路になる年

総括2016年もままならぬ内に年が明けた。
昨年は活動十周年という節目を迎えながら、実に書いていない年となった。勿論、活動はしていてそれなりに成果は上げているつもりだ。しかし、応援してくれている方からは「まだか」と催促されたり説教されたりする事もある。遅々としながら進んでいるものの、飛躍するにはやはり集中するしかないのだ。
ぐだぐだ布団にくるまって「インプット」と称して本を読み耽るばかりの時間だけでは、社畜として食われるのを待つばかりである。まして病におされて床でくるまっている時間も、もうない。

2017年は兎に角活動する。
書く。
某イベント開催に力を注ぐ。
その二点と愛する人たちに時間を割く。

その時にはどうしているだろうと想像もつかなかった。三十になる年が来た。

拙作「褌我来也」をKindle化

日本史Dに寄稿した短編「褌我来也」をKindle化。
発売開始。

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知っている人の中にはあれ、何か言ってたあの本とかは?という意見もあるだろう。
それはもうちょっと待って欲しい。それまでは短編を味わって欲しい。コメディタッチで読みやすい一作だ。
調べると前回から三年も経ってしまった。
遅々としている間に時は過ぎていく。行動の遅さを反省し、次に動き始めている次第である。

いー12は第二回文学フリマ福岡で訪れるべきブース

大坂文庫は第二回文学フリマ福岡にい-12で参加する。
今回も作務衣を着て、陣羽織を用意し気合は十分であるのだが、在庫が少ない。
即ち、早くに訪れなければ完売御礼をすぐになってしまうような状況なのである。付け加えると増刷する財力もなかったが為にこの境遇となっている。
頒布物は以下の通り。

c.bunfree.net


これ以外に白昼社の本も委託請負しているので、気になる方はこちらを一緒に大坂文庫の本を買ってみては如何か。

ピエール研修する

ピエールはその髪型が芸をする時のタムケンに似たデブだ。
声はガラガラ、動きは何かの芸人に似ている。
彼の事を私は馬鹿にしていた。その仕事から「なんでこんな奴を雇ったのだ」とずっと思っていたのである。今日まで彼の役職も名前も知らなかった。私の中ではピエールで通っていたのである。
そんな彼が研修をした。自己紹介をする彼の経歴は中々に聞こえがいい。しかし、流れ流れてこの●●会社に来た事を忘れてはならない。ましてや日頃の業務内容である。あれは穀潰しだ。だが、私は経歴のところで彼をちょっと見直した。わけわからん奴から、左●デブへと。
彼は血を吸った蛭のように膨らんだ体をポンポンと弾ませて饒舌に語った。
要約すると「日経新聞を購読せよ」と「貴様らは最低ラインにすら立っていない」ということである。「自己投資せよ」とも宣った。
情報が溢れるこの時代に日経新聞のみを正解とするピエールの限界もさる事ながら、研修会場にいる皆が購読出来る給料を得ていないのである。そんな隅々まで読まないものを購読するぐらいなら、隅々まで使えるエロ本を買っているような連中ばかりだ。
ましてや自家発電に勤しんでいて自己投資など二の次である。出世しても給料は年にして5千円しか上がらず、飲み会の足しにもならない。それならばキリのいいとろこで転職してやろうと、士気が低い兵卒揃いなのである。
恐らくピエールはこの機会にぶちかませと唆されたのだろう。無邪気にその言葉を信じたのか、その舌は終了まで衰えることはなかった。ふと横を見ると後輩が白目をむいて鼾をかいていた。
彼は最後にこう締めくくった。
「言われたらやりましょう。言われてもやらないとは信じられない」
彼の言葉は響いたのだろうか。初対面の人が多く、その評価はこの時間で全て決まると言っていい。
結果、会場にいた皆はピエールのようになりたくないから言われた事をやらず、彼を信じもしないし、信じられたくもないと、早々喫煙室に去った。