大坂文庫

個人作家、上住断靱の活動記録

初めてのひなまつり

男兄弟しかおらぬ上住家ではひなまつりをしたことがない。母も自分のためにひなまつりをすることはなかった。恐らくひなあられが嫌いだったのだと思う。
今年は妻から「ケーキは食べていた」というので、ジョリジョリと髭を剃って、近所の近鉄百貨店まで行った。妻は留守番だ。女は化粧やら何やら準備で大変であるから、簡単な買い物なら男が行ったほうが楽である。
余談ながら化粧なしでもいいではないかと思った男がいるならば、それは妻に「女を捨ててもいいよ」と言っているのも同義なので口にしないほうがいい。口にした途端、山の神は寝そべっているトドと化してしまうだろう。
雨は既に止み、花粉症の薬を飲み忘れていたものの、ぐずぐずにならずに済んだ。思いの外、肌寒かった。
着いた百貨店には人が多く、ケーキ屋で少し待った。
ひなまつり限定のものにするか、普通のものを二つ買うか迷った挙げ句に「初めてひなまつりするからなぁ」と限定のものを買った。中々の値段であった。こんな性格だから金が貯まらないのだ。容赦なく右往左往する自転車から、ケーキの箱を庇いながら家を目指す。箱にぶつけたら、自転車から引きずり下ろしてやると気合を入れていたせいかすぐ脇を通る自転車はなかった。大阪は壊れ物を持って歩くのに、特別気を遣う場所である。
無事帰って「でっかい方を買った」と妻に言うと、特に怒られることもなかった。
「ひなまつり」と書かれたチョコレートプレートは妻にやって、自分は兎型のを二つ貰った。

f:id:duwazumi:20180304104842j:plain