大坂文庫

個人作家、上住断靱の活動記録

心を落ち着けろ

昨日、会社の帰りに胃酸が逆流した。
久しぶりのことで懐かしい痛みであったが、これが悪化し、夜は悶えた。しかし、あまり悶えると妻の睡眠を邪魔してしまう。
私はベッドから這い出すと寝室を出て、冷蔵庫の前で横になった。
痛みで寝付けず、そこでも悶えた。何度か救急車を呼ぼうかと思ったほどだ。その内にグンという感触がして、トイレに駆け込み少し嘔吐した。
最近、会社でイライラし過ぎたせいかもしれない。仕事中はもっと心を穏やかに体をゆっくり動かさなければと反省した。

普段なら休んで病院へ行くものの、諸々立て込んでおり、休むわけには行かなかった。結果としていつものように「休めばよかった」と後悔することになるのだが。
朝早くから開いているドラッグストアで親切なおばさんに薬の説明を受けて、良さそうなものを買って飲む。ドーピングしながらの一日が始まった。
歩くのも普段よりゆっくり。振動で痛いから。
人の挙動を見ない。不合理にイラッとするかもしれないから。
相手の怒りは右から左へ受け流し、FF14をプレイ中のように、姿勢を正して心を落ち着けろ。
そう自分に言い聞かせた。
しかし、暗算をしている最中、机に領収証がポンと机に置かれ、「これ○○に渡しといてくれ」と不意打ちがきた。この領収証はその○○から昨日、送られて来たブツではないか。私が少し固まっていると、「分からんのなら聞け!」と怒鳴ってきた。
いきなりのことで何のこっちゃさっぱり分からなかったが、もう少し間を置いてから、その領収証で経費を切って、お金を○○に渡せという意味かと理解した。間抜けだどうのこうのと怒鳴る輩に頭突きをしてやろうかと思ったが、胃がキュウとしたので慌てて考え直した。人が暗算中に声をかけるほうが間抜けではないか。
それらを切り抜け、帰るべく電車に飛び乗り、つり革に掴まって一息つく間もなく、脛に感触がある。
満員電車で足を組んでいる野郎がいた。
しかもご丁寧に足でリズムをとっていて、私のスーツに景気よく泥をつけている。
私は胃が叫ぶのもかまわず、液体胃薬を全部開け、その男に浴びせた。金切り声を上げて、組んでいる足を正しい位置へと直してやり、景気づけに股間へ残りの胃薬をぶっかける。足を戻すときに私のスーツを汚した靴はひっぺがした。
「お前は悪くない。この靴が悪いんだ」
私は窓を開けると、靴を力一杯投げた。スマホでお気楽な連中が写真や動画を撮っている。靴を片方だけ履いた男は間抜けな口を開いていた。
靴は対抗電車に跳ねられ、平野川へと消えた。