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大坂文庫

個人作家、上住断靱の活動記録

金柑

行きつけのバーにジンベースの金柑酒が出ていた。
隣に陣取っていた中年の女が私を田舎者呼ばわりして「大阪で金柑は買う物よ」と宣った。私が人生で初めて金柑を口にしたのは亡き祖父がよく潜った山に同行した折に「もいで皮だけ食え」と言ったから、金柑をもいで川で洗って食べた。そのことから、金柑は「もぐもの」と思っていた。
そんなことを中年女に話しつつ、飲んで皮を食んだ。流石にイイ金柑を使っているなと感心しながら。
中年女の友達が同じものを頼み飲んでいたが、退席した後を見ると皮が随分と残っていた。
谷町ですら田舎呼ばわりした。バーのマスターの娘さんは谷町でバーを営んでいることすら知らぬらしい。退席間際にあれこれ偉そうにしていたところを見ると、呑兵衛として無粋であり、物を知らぬということはこれであると嘆息した。
同席した友人との会話は楽しかったが、中年女はイケていなかった。齢は六十を超えているだろう。自分がその頃にはそうならぬよう気をつけようと、背後で性風俗論をぶちまける男たちの話に辟易しながら家に飛び込んだ。