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大坂文庫

個人作家、上住断靱の活動記録

セールス真理の扉

「お前何もやってへんやんけ」

血走った眼で新しい上司が放つ。
上に立つ者として絶対に言ってはいけないワードだ。私がこれを口にしたら大阪軍団の気の良い連中は槍を持って私を穴だらけのレンコンにするだろう。丁寧に縦穴で。
彼の世界ではセールスとはお願いしまくるものである。
厚かましくもお願い出来るというのは一つの才能だと思うが、世の中には別のセールス方法も存在することを彼は知るべきだ。彼のウドが如く細っこい体より世界は幅広い。
お願いセールスは、それが出来ないものからすれば「一発やらせてくれ」と懇願しているようなもので、口説き文句は多種多様。「一発」では、如何に勉強不足か自ずと分かるであろう。彼は扉の前に跡形もなくなる。
しかし、彼にはこれが全てだ。
ここにいる以上、上司である彼の発言はこの世の真理だ。クソ狭い世界の中で。
彼が私に言う「何もやってへん」は客に駄々をこねることだ。駄々をこねていない私は何をしようとも何もやっていない人間になる。

時には協力を仰ぐ必要もあるだろう。
だが駄々をこねるセールスマンは価値がない。
見返りを出せぬ者を誰も頼りにしない。
ねだるばかりで提供出来るものがなければ消えるのみである。転勤すればリセットされるが、それでは自身が育たない。

ぐだぐだ言ったが、最初の一言に対して「何もやってないわけないですよ」と返した。
彼の真理は諸人にとって害である。