翠嶺クラフティング

個人作家、上住断靱の活動記録

ピエール研修する

ピエールはその髪型が芸をする時のタムケンに似たデブだ。
声はガラガラ、動きは何かの芸人に似ている。
彼の事を私は馬鹿にしていた。その仕事から「なんでこんな奴を雇ったのだ」とずっと思っていたのである。今日まで彼の役職も名前も知らなかった。私の中ではピエールで通っていたのである。
そんな彼が研修をした。自己紹介をする彼の経歴は中々に聞こえがいい。しかし、流れ流れてこの●●会社に来た事を忘れてはならない。ましてや日頃の業務内容である。あれは穀潰しだ。だが、私は経歴のところで彼をちょっと見直した。わけわからん奴から、左●デブへと。
彼は血を吸った蛭のように膨らんだ体をポンポンと弾ませて饒舌に語った。
要約すると「日経新聞を購読せよ」と「貴様らは最低ラインにすら立っていない」ということである。「自己投資せよ」とも宣った。
情報が溢れるこの時代に日経新聞のみを正解とするピエールの限界もさる事ながら、研修会場にいる皆が購読出来る給料を得ていないのである。そんな隅々まで読まないものを購読するぐらいなら、隅々まで使えるエロ本を買っているような連中ばかりだ。
ましてや自家発電に勤しんでいて自己投資など二の次である。出世しても給料は年にして5千円しか上がらず、飲み会の足しにもならない。それならばキリのいいとろこで転職してやろうと、士気が低い兵卒揃いなのである。
恐らくピエールはこの機会にぶちかませと唆されたのだろう。無邪気にその言葉を信じたのか、その舌は終了まで衰えることはなかった。ふと横を見ると後輩が白目をむいて鼾をかいていた。
彼は最後にこう締めくくった。
「言われたらやりましょう。言われてもやらないとは信じられない」
彼の言葉は響いたのだろうか。初対面の人が多く、その評価はこの時間で全て決まると言っていい。
結果、会場にいた皆はピエールのようになりたくないから言われた事をやらず、彼を信じもしないし、信じられたくもないと、早々喫煙室に去った。

当たると来るメール

週に一回、BIGを購入している。スポーツ振興くじのアレである。
自動購入なので毎回「買いますよ」「買いましたよ」というお知らせメールは来ていた。当選結果については、毎週ドキドキするのも心臓に悪いから当選した時だけ通知が来るようにしている。
先日、その通知メールが来た。職場でだ。
私は飛び上がりたくなる衝動を抑え、こっそりロッカールームでいくら当たったか確認した。まだ焦ってはいけない。辞表を出すのは振込を確認してからだ。
震える指で画面をスクロールすると「570」が一瞬通り過ぎた。全て見たが、他に金額らしき数字はない。画面を再び上へと戻していく。通り過ぎるは「570」の数字。もう一度戻る。570円。
なんということだ!桁が6個ほど足りないではないか!
私は意気消沈し、友人にLINEを送った。
「BIG当たったよ」

そのメールが今日も来た。家だからそんなに慌てる事もない。COOLに金額を確認する。勿論、辞表は振込を確認してからだ。
300円
私はたまたま電話していた友人に
「またBIG当たったよ。300円当たったよ」
「よかったねー」
しかし、塵も積もれば山となる。この少額当選がいつかBIGに繋がるのではないかと信じている。勿論、当たったら誰にも話さないだろう。振込が入ったのを確認してから会社に辞表を出し、奨学金を全額返還する。寄付はおそらくしない。
こんなブログ記事を書いたら会社を辞めた途端に「あいつBIG当たったぜ」と噂されるかもしれないので断っておくが、BIG一等当選よりも高い確率で「もう限界」となって辞めるだろう。

ナワバリ

ブログ記事がほぼ告知しかない。
たまに掌編を上げたりもするが、それも不定期。更新されないブログは碑文であり、気紛れで訪れた人にしか読まれない。思った事はすぐ様Twitterで吐くのでブログネタも溜まらない。他で公のものを更新するせいか億劫になり全てが遅々としているのである。
言い訳はこれまでにして、要は書く事にもっと集中しようと思った次第で今日の更新となった。
久しぶりのネタは仕事中の逃走劇である。
何、犯罪ではない。厄介事からの逃走だ。

大阪は曇。
汗っかきの私は今日もヘルメットをびちゃびちゃにしながらスーパーカブで営業に回っていた。お客さんのとこへ行くには駐輪に気を遣う。一つ間違えば、物陰から駐禁おじさんが私のカブを舐め回し、不吉な呪符を貼り付けていってしまうからだ。
もう一つある。
用事がない場所の前、近隣に駐輪すると苦情がくる場合だ。これもうっかりとはいえ、起こしたくない事態だ。
私は慎重にお客さん家の隣にあるマンションの植林付近に停めた。ここは入り口でもなければマンション居住者用の駐輪所、その出入り口でもない。謂わば一般道である。
ところが、事件はそこで起こった。
お客さんと手続きを済ませ、機嫌良くカブに乗る準備をしていると、植林付近を掃除しているおばさんがいた。
私はその背中から、あるものを感じていた。
田舎出身だから分かる「ナワバリ意識の強いやつ」の気配である。
大体は女性で、自らのテリトリーでないところまで自己所有のように振る舞い、残虐非道を繰り返す。神様もきっと禁止している行為である。旅行先の金沢でこの手の土人会い、旅行気分を台無しにされたこともある。上住、精神の敵といっていい。

私は鍵を差し、ヘルメットを被った。グローブをはめる。
おばさんが立ち上がった。
(くるぞ)
「どこに用ですか?」
顔を向けたおばさんの目が予想以上に死んでいる。ホウキとチリトリで武装しているからかなり危険だ。ヘルメットの中が変な汗で湿り始めた。
「あっち」
私の指は高々と太陽を指した。
嘘ではない。私は常に高みを目指している。
「はぁ……」
虚を突かれるおばさん、その隙にエンジンをかけた。
愛車はいつもは焦れるのに、この時だけは素直に応じた。
振り返ってはいけない。例えナンバーを覚えられたとしても。右手に力を込めてフルスロットル。
私とカブは太陽に向かって全速力でその場を後にした。

第五回福岡ポエイチ 頒布物一覧

来る6月18日(土)6月19日(日)冷泉荘ミュージアムにて開催される「第五回福岡ポエイチ」に大坂文庫は二日とも参加する。

遠征に遠征を重ね、在庫が少なくなり売り切れた物もあるので、初版が欲しい人は悩まず財布の紐を解いて欲しい。

以下、頒布物と簡単な説明

 

【帰宅したら弟がニート
価格500円
公募アンソロジー第一弾
通称「おとニート
TwitterFacebook、ブログで公募した「取り敢えず本を作ろう」というテーマ不在の短編小説集です。

参加作家(掲載順)

表紙テーマ(動揺)小柳日向

「ループ」「19KH」      稲荷古丹 (二作品執筆)
「帰宅したら弟がニート」   上住断靱
「philia」          坂上悠緋
「ウエディング」       猿川西瓜                                     
天皇陛下の恋人」      森井聖大

【表題作あらすじ】
坂を転げ落ちるように災難に見舞われる青年、小幡は趣味である創作同人でも怒りに見舞われる羽目に合う。

 

【あの心地を求めて時速六十キロ】
価格1,000円
公募アンソロジー第二弾
通称「あのここ」
テーマ「偏愛」について八人の作家が短編小説を書いています。

参加作家(掲載順)

満たされない己の為に人はどこへ逃げるのか。
    
装丁 上住断靱
                                 
「返信拒絶」           高村暦
「追いかけ記」          猿川西瓜
「ADAPT LIKE ANARCHY」      稲荷古丹     
「遠ざかる空」          寄政和之 
「マイウェイ」          ふかやねぎ   
「philia」            坂上悠緋    
「雅子さん愛子ちゃん救出作戦」  森井聖大  
「あの心地を求めて時速六十キロ」 上住断靱

<表題作あらすじ>
時速六十キロの風は女性の胸(Cカップぐらい)と同じ感触といい、それを追い求める風変わりな男、和泉長次郎とその友人の生き方についての物語

 

【見上げた男】
価格1,000円
公募アンソロジー第三弾
テーマ「虚勢」について十人の作家が短編小説を書いています。

参加作家(掲載順)

問題を解決するために、かっこつけたいがために、その人に嫌われたくないために……。
人が織りなす罪の色濃き物語集。

執筆陣
「見上げた男」       上住断靱
「音花床下」        猿川西瓜
「梅村先輩と俺」      蟹川弘明
「秋山クレハの恋愛」    山本清風
「眠れない水槽の底で」  小柳日向
「反線主義」        高村暦
「紅白戦士メデタイガー」 ふかやねぎ
「純水」          泉由良
「ビヨンド・ザ・ホース」  稲荷古丹
「未事記」         森井聖大

装幀・校閲 書籍工暦(高村暦)

<表題作あらすじ>
小心者でありながら興信所を営む藤井はとある不倫調査結果を報告しにいく、そこで語る依頼者の夫の振るまいと、流されるままに生きて来た依頼者の結論に藤井は動揺する事となる。

 

 


【めんたいたこやき(めんたこ】new!
価格300円

大阪の派遣会社に勤める詩(28歳独身)はかつて福岡に教師として勤めていた。そして、数年が経ち、恋する気持ちを思い出した詩は福岡に残してきた恋人に会うために単身福岡へと赴く。
一方、大学受験に失敗した村田は、高校時代禁断の恋に焦がれた女性を追いかけるべく、夜行バスに飛び乗り大阪へ向かった。かつての恋人は村田のことを憶えているのだろうか……。
思い思いの気持ちを土地に馳せて、めんたいことたこ焼きを頬張り、本当に二人が求めたものは何だったのか……。そうして二人は何を得るのか……。
すれ違いラブコメディ
二人に待ち受ける衝撃の結末とは!?
大坂文庫代表上住断靱と、日表造形社代表小柳日向による、初コラボレーション作品。



【おおきくなる】

アンソロジーシリーズ第五弾
テーマは「歓喜

全ての高くの花に捧ぐ   上住断靭  
月の欠片         小柳日向  
創造曝露         高村暦   
ちいさくなる       山本清風  
朝が好き         猿川西瓜  
not sweetie, but melty    泉由良
【薄紫の糸】       梅川もも  
おおきくなる       上住断靭  
テキリーゼ        稲荷古丹

 

倭国合戦譚~日本創世~】

日本の「戦」、合戦だけでなく政争、外交と幅広く枠をとったアンソロジー第一弾。

今回は神話~鎌倉時代まで

真備すなわちマキビと訓み 添田健一
聲の標         白藤宵霞
黒田悪党        上住断靱

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募集:第二回文学フリマ金沢前日観光

第二回文学フリマ金沢前夜観光
同行メンバー募集のお知らせ
現在、上住断靱、青砥十の二名

以下行程。順不同
金沢駅13時集合、そっからレンタカードライブ観光。
車返却後飲みに行くけれど、行くのは自由。


泉鏡花記念館(金沢城公園の北)
21世紀美術館兼六園の南)
・ひがし茶屋町兼六園の東)
・忍者寺 妙立寺(兼六園の南西)
金沢城公園ライトアップ

解散時、レンタカー返却時間までに余裕があれば各ホテルまで送迎予定。
料金:レンタカー料金参加人数頭割り(予定)

※希望があれば行程変更可

■参加資格 特になし(運転免許取得者でなくても参加可)

      因みに上住は運転しているゴールド免許
      但し、迷惑行為等目立つ場合は七尾城に捨てr

 

参加希望者はTwitterアカウント@uwazumiにリプかメッセージを!

テーマ「悲憤」純文学アンソロジー執筆者募集のお知らせ

人は皆我が身可愛さに悲しみ憤る。

それが他者によってか、自業自得か別にして。

 

大坂文庫純文学アンソロジーシリーズ第六弾

テーマ「悲憤」 の執筆陣を募集します。

 

募集人数10名ほど
〆切り2016年9月30日
A6版 17行×40文字 20ページ程度。
自己紹介200字程度
あとがき400字程度

参加希望の方はこの記事にコメントか、Twitter @uwazumiまでDMかリプをください。 

 

・応募人数多い場合は過去に寄稿頂いた方を優先にします。

電子書籍化も予定しております。

・報酬は完成本一冊(電子書籍化の際は別にご連絡します)
頒布は第二十三回文学フリマ東京を目指しています。

第二十二回文学フリマ東京報告

当日、無事に起床して設営から参加した。

いつもの第二展示場と違い、だだっ広く往復に時間がかかった。イベント的に良かったが、設営は思ったより疲れた。バミる作業は立ったり座ったりで運動不足を痛感する。無事に設営が終わると一杯飲みに行きたくなる気分が起こるのは今回も変わらない。

新刊「倭国合戦譚」をギリギリに入稿したので、無事に印刷出来たか心配で仕方がなかった。早くブースに行きたい衝動を抑えつつ、入場券を受け取る。その係が終わるとブースに走った。

何せ今回は体調不良で欠席となった合体配置の日表造形社の設営もしなければならない。日表造形社は今回、什器なし布のみとはいえ請け負った責任がある以上、不安は消えない。

あと来店者に渡す紙袋を助っ人である稲荷古丹さんに頼んだので、彼が来るまで一人でブースを見なければならなかった。前回のように一般来場者がブースの背後に来るという事はなかったので良かったけれど、その不安があって常に背後に気を配っていた。

新刊は無事、日表造形社の荷物も無事。

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望月代表の挨拶に拍手で応え無事に開場する。

前回の来店者さんや数人挨拶に来て貰ったりしている内に、爽やかに稲荷古丹登場!(因みにこの日が初対面)

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彼が気を利かせて小銭を用意してくれていたので、うっかり家に忘れた釣り銭も無事に確保する事が出来た。

大学の先輩が来たり、ウコンの差入があったりして、なんやかんやしている内に終了。

始終慌ただしく、全部見られなかったのが残念。挨拶しそびれたところも多かったので、今度から事前チェックしてからいこう。うん。毎回言っているきがするけれど。

懇親会は一次会だけ出て、後ろ髪をひかれる思いで大阪へ。

帰り途中まで一緒だった金沢のセクシーさんが金髪を隠して黒髪ヅラで会社行っているという話をして、面白いこというなあと笑いながら次回どうするか構想を練っていた。